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効果的な就労支援の提案~働くことに困難を抱える人と働き手を必要としている人をつなぐために~①

Encourage室長は、某行政機関で出向という形で5年間働いていました。

平成27年4月1日に、「生活困窮者自立支援法」が施行され、その必須事業として「生活困窮者自立相談支援事業」というものが開始することになり、その立ち上げに参画することになったのです。

室長は、精神科病院で薬物療法でよくならず、再燃と休職や離職を繰り返し、生活保護に至っていた人を多く見てきました。治療を受けてもよくならないと自信を失います。また、「本人の気持ちや心の問題」とされ、社会的に非常に弱い立場に追いやられ、「自分はダメな人間だ」と恥の意識を強く植え付けられた結果、力を奪われていくのです。そうやって、精神疾患やメンタルヘルス関連の問題は、貧困に直結していきます。

心理療法でこの恥を和らげていくことは非常に治療的なのですが、心理療法やカウンセリングは自費になります。そのため、問題がこじれてしまうと経済的な問題から心理士との面接を希望しても受けられない人がいました。しかし、心理検査は保険が使えるため、公費負担になります。そのような事情から、ある生活保護を受給している人が医師に「心理検査を受けたい」と希望され、私が担当することになりました。

カルテを読む限り、ここ数年、デイケアや作業所などの福祉サービスを利用するものの、1週間程度で行けなくなり除籍となっていたようです。そこで、これまでのいきさつや検査を通してどんなことを知りたいか聞き取りをしてから、いくつかの検査を実施することにしました。

 

※個人情報があるため、詳しいことは書けませんので、経過は省略します。

 

医師用の心理検査結果報告書を作成し、外来で医師が結果を口頭で伝えたところ、「できれば文章でもらいたい」とご希望されたため(ご本人用の手紙を作成するのは非常に神経を使い、時間もかかる作業なのでできないことが多いのですが)、A4用紙2~3枚にまとめ、お渡ししてもらうことにしました。

その方とは検査後は直接お会いすることはなかったのですが、自分が担当した患者様のことは気になります。定期的にカルテをチェックしていました。

すると、心理検査後にご本人がデイケアの利用を希望され、3か月間定期的に通い続けられていることがわかりました。

「これまで、1週間持たずに通えなくなっていた人が、心理検査後に3か月約束通り通えている」という事実を見て、「心理検査結果には人を変化させる力がある」と自信を持った私は、「心理士が関われれば、自分の力でもう一度働けるようになる人がいる」と確信し、そういった人たちに私の持つ専門技能を提供したいと強く願うようになりました。

それを叶えるために、この「生活困窮者自立相談支援事業」に従事することを決めたのです。