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効果的な就労支援の提案~働くことに困難を抱える人と働き手を必要としている人をつなぐために~⑧


5年間の行政生活の内、3年近くを費やした政策研究。自分のやりたい相談支援をするためには、行政職員に「専門職はこのような視点でケースを見立て、支援方針を立てているんです。そうすると、こんな風にケースが動いて、解決につながっていくんです。多職種が自分の専門性を生かして、複合的に関わっていくことでこんなによくなるんです」ということを知ってもらう必要がありました。

私が市長室に行った後、紹介者のおじいさんのところに「ものごとには何事も順序ってものがあるんだから、いきなり市長室に連れて行くな」「提案は下から徐々に上にあげていくもので、あんなことをされたら困る」と市長から直電を受けた担当課の課長と職員が何人も押し寄せて文句を言ったそうで、私は言われた通り、まずは自分の上司から味方につけていこうと努力しました。でも、市の係長たちには話が通じません。制度についてよく読み込まず、勝手な解釈でおかしなことを言っていました。どうしたら自分の考えを上層部に伝え、事業の必要性を認めてもらえるか、悶々としていたところ、庁内メールで「政策研究の募集」の記事が流れてきました。これならば堂々と自分の考えを広く伝えることができると思い、活路を見出したように感じました。政策研究を通して同じようにケースを見られる人たちを育てていくことで、目標に近づけると簡単に考えていました。この政策研究や困難ケースの対応を通して、行政の信用を勝ち取り、生活困窮者自立相談支援事業の補助金を獲得することを目指して頑張れば、きっとうまくいくと信じて、仲間探しを始めました。

幸い、庁内にはケース対応に困っている職員が何人かいたので、「事例を通して、一緒に勉強しない?」と声をかけたら、6人の職員が協力してくれることになりました。その職員は、子ども家庭課・障害福祉課・生活保護担当・長寿社会課と多岐に渡っており、ケースワーカー、保健師、精神保健福祉士、そして臨床心理士とまさに多職種連携チームの結成。

2年計画の1年目は、「効果的な就労支援の提案~相談体制の充実に向けて~」というお題で、事例研究を行いました。どのような相談が窓口に寄せられていて、いくつの機関がそこに関わり、どのような転機となったのか、見える化できるよう工夫した研究計画を立てました。

もちろん、私の上司の役職者はおもしろくありません。課長と一緒に「客観的に評価して提案するようだから、お手並み拝見」という感じでした。

「心理士を甘く見るな!卒論と修論で培った研究者としての側面を発揮して、専門職の力を見せつけてやる!!」と負けず嫌いな私は志気を高めたのでした。