カウンセリング/心理療法


「カウンセリングと心理療法って、どう違うんですか?」と聞かれることがあります。

一般の方から見れば、両方とも同じようなものですし、違いについて意識していただかなくてもいいのでは?と個人的には思っています。

両方に共通する点としては、「お会いする時間と場所を決めて、定期的にお話しする場を作る」ということになるでしょうか。

お引き受けする立場の心持ちを明かすと、カウンセリングはその時々でクライアントさんにお困りになっていることをお話しいただき、気持ちをスッキリさせたり、穏やかにすることを目標にします。

心理療法の場合は、明確な困りごと・症状があり、それが心理療法で改善すると見込んだ場合、症状の軽減や消失を目指して積極的な働きかけをしていくことになります。そのため、治療関係に入るとクライアントさんがこれまで避けていたようなことにも踏み込んでいくことがあります。おそらく、「癒し」とは程遠い作業になるでしょう。

でも、どちらも似たようなところがあります。私が出会った思い出深い方のお話をします。

 


あるクライアントさんの3年間

3年間くらい、週に1度のペースで会い続けていた若くてかわいらしいクライアントさんがいました。その人は、カウンセリングを開始して数か月間、約束の50分間泣き続けている状態でした。「高井さんには、自分には見えていない、自分の黒い部分が全部見えているんじゃないかと不安なんです」「会うと具合が悪くなるけど、話さないと不安なんです」と言っていました。その人にとってのカウンセリングは決して心地いいものではなかったとおわかりいただけるでしょうか。

そして紆余曲折を経て、出会いから3年後のある日。

「これまで話を聞いてくれて、ありがとうございました。自分一人の力でどこまでやっていけるか試したいから、カウンセリングを卒業したい」と笑顔で終結となりました。

さらにその1年後、偶然再会したのです。

「あれからいろいろあったけど、大きく調子を崩すことなくやれています。仕事も続けられています。カウンセリングを始めた時、高井さんから“今はつらくて仕方がないから良くなると思えないだろうけど、3年くらいしたらあの頃は大変だったなと振り返れるくらい楽になるよ”と言われて、本当にその通りになったねと母とも話したんです。カウンセリング、受けてよかったです」。このお話しの後、ご本人が席を外した時にお母さまが言いました。「カウンセリングをやめたいと言い出した時、本当に大丈夫なのか、不安だったんです。でも、“先生とも相談して、できるところまで頑張れって言われた”と聞いて、親としても不安だけど本人を見守るしかないって思いました」。

 


この方の場合、明確に何かを変えることを目標にお会いしていたわけではありません。安心して人と過ごせるようにすることが何よりも大切だったので、不安をあおらないように安定した関係を作ることに努めました。でも、クライアントさんは不安に直面しなければならず、自分の中にある「黒いもの」と闘っていたようです。私はクライアントさんが黒いものに飲み込まれないよう支えるのが仕事で、クライアントさんは黒いものを無害なものにするために自分を変化させるよう頑張りました。

 

カウンセリングも心理療法も、人によって進め方も何もすべて違います。

 

 

ひとつ言えることは、どちらも大変な作業を伴うけれど、越えたその先には素晴らしい景色が待っているということです。